AS400 / IBM i保守を若手へ引き継ぐには、画面操作からRPG/CLの調査、業務側への確認まで段階を分けます。以下は社内育成の6か月モデルであり、経験・業務・検証環境に合わせて調整する例です。研修サービスの実施期間や修了保証ではありません。
6か月の育成カリキュラム
| 期間 | 学ぶこと | 到達目標 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 5250、ライブラリ、オブジェクト、基本コマンド | 画面と用語に慣れる |
| 2か月目 | ジョブ、ジョブログ、スプール、MSGW | 障害時の入口を見られる |
| 3か月目 | 夜間バッチ、QSYSOPR、日次監視 | 運用確認を担当できる |
| 4か月目 | RPG/CLの読み方、DSPPGMREF | 影響調査の流れを理解する |
| 5か月目 | 販売、在庫、出荷、請求など業務理解 | 業務担当者と会話できる |
| 6か月目 | AI活用、資料化、テスト観点 | 調査と引き継ぎ資料を作れる |
任せていいかは、質問と報告の質で判断する
カリキュラムを組んでも、実際に作業を渡すかどうかは別の判断になります。私が見ているのは、進捗でも作業スピードでもありません。依頼した内容の確認と、周辺への影響調査をしてくれているかです。
ここが分かるのは、質問と報告の質です。作業が終わってから見るのでは遅く、着手前の質問の時点で見当がつきます。
指示範囲と周辺影響を分けて確認する
注意したいのは、指示された修正だけを行い、呼び出し元や後続処理への影響を確認しない作業です。
指示どおりに直っている。動作もする。でも、そのプログラムがどこから呼ばれているか、直したことで何に影響が出るかを見ていない。こういう作業は、その場では完了に見えて、後で問題になります。
誤解のないように書いておくと、指示の範囲を勝手に広げてほしいという話ではありません。若手が頼まれた作業をそのままやること自体は正しいです。問題は、渡された作業の中身と、それが何に触るのかを確認していないことです。
やることを増やすのではなく、やる前に確かめる。この違いです。
任せられると判断する質問
着手前にこういう質問が出てくると、影響調査をしていることが分かります。
- このプログラムは他からも呼ばれていますが、そちらへの影響はどう考えればよいですか
- 直す対象はこの処理で合っていますか。似た名前のものがもう一本あります
- このファイルを更新すると、後続の帳票側にも出ますが、そこまで確認しますか
- エラーになった場合、後続処理はどう動く想定でしょうか
- 依頼は本番の話ですか、検証環境の話ですか
どれも「確認した事実と判断が必要な点を分けた」質問です。ただし、本番か検証か不明、権限がない、操作の影響が分からない場合は、調べる前に止まって質問することが正しい対応です。質問の早さだけで能力を判断しません。
報告で見ているところ
| 報告の内容 | どう判断するか |
|---|---|
| 「終わりました」だけ | 何を確認したか分からない。まだ任せられない |
| 直した箇所の説明がある | 作業内容は理解している |
| 呼び出し元をたどった範囲を言える | 影響調査をしている |
| 調べたが分からなかった部分を言える | 信用できる。どこまで確認済みかが分かる |
| 確認できていない範囲を先に伝えてくる | レビュー担当と任せられる範囲を判断する |
特に見ているのは最後の2つです。「確認済み」と「未確認」を区別できることは、任せる範囲を決める材料になります。それだけで本番作業を一人に任せるのではなく、検証結果・レビュー・作業承認をそろえます。
変更時に見る項目は、RPG/CL影響調査チェックリストで確認できます。調べた根拠、対象範囲、未確認事項を分けて報告する練習に使ってください。
成長を見込めるかどうかで、渡し方を変える
最初の試行錯誤は、戻せる検証環境と承認された対象範囲で行います。失敗した時に原因・修正・再確認を一緒に振り返り、習熟に応じて担当範囲を広げます。本番で失敗させて覚えさせる意味ではありません。
一方で、同じ失敗を繰り返して、確認の仕方が変わらない場合は渡しません。厳しい言い方になりますが、失敗そのものではなく、失敗のあとに確認の型が変わるかどうかを見ています。
教える側から見ると、ここが分岐点になります。作業手順を教えるのは簡単ですが、確認の型が身につくかどうかは本人次第の部分が残ります。だからこそ、最初に渡す作業は「確認しないと終われないもの」にしておくと、見極めが早くなります。
若手に最初に持たせるチェックリスト
- ログインできない時に見る場所
- ジョブが止まった時に見るジョブログ
- 帳票が出ない時のWRKSPLFとOUTQ
- MSGW(メッセージ待ち)が出た時に勝手に返信しないルール
- RPG/CLを読む前に業務担当へ聞くこと
- AIへ貼る前にマスキングする情報
学習の入口は AS400初心者向け学習ロードマップ、引き継ぎに必要な資料と聞き取り項目は、AS400担当者の引き継ぎチェックリストも合わせて確認してください。
AIを研修に使う時の注意
CodexなどのAIは、処理概要、用語、テスト観点、質問リストを整理する補助に使えます。教材は架空データや利用許可を得た資料を基本とし、社内・顧客の情報管理規則を確認します。マスキングだけで外部AIへ送信してよいとは判断せず、回答をソース・公式資料・検証結果と照合してください。
各段階で、説明できる成果物を1つ残す
| 段階 | 課題の例 | 指導者が確かめること |
|---|---|---|
| 1か月目 | 指定された検証環境で対象ライブラリとオブジェクトを探す | 本番との区別、同名オブジェクト、対象の記録ができる |
| 2か月目 | 教材のジョブログからメッセージIDと直前の処理をまとめる | 原因の断定をせず、根拠と未確認を分けられる |
| 3か月目 | 正常日の記録を基に日次点検票を作る | 対象ジョブ・正常終了時刻・連絡先が具体的である |
| 4か月目 | 小さなCL/RPGの呼び出し関係と更新先を図にする | ソースと実行時条件の両方を見て、調査の限界を書ける |
| 5か月目 | 業務担当者との打ち合わせに同席し、質問と回答を整理する | 現行の動作と期待する仕様を混同しない |
| 6か月目 | 影響調査とテスト計画を別の人へ引き継ぐ | その人が同じ根拠にたどり着き、未確認事項を把握できる |
指導側も、課題の正解だけでなく、確認手順・相談の仕方・レビュー時間を用意します。業務の聞き取りには業務ヒアリングシート、AI教材の準備にはソースをAIに読ませる際の注意点を使ってください。
この育成計画の一部として、RPG/CLの調査から小規模なコード作成・テストまで、Codexを使う手順を社内で練習したい法人向けに、半日ハンズオン研修(標準4時間)を行っています。研修内容・料金・準備条件は、Codex実践研修のページで確認できます。