AS400 / IBM iの保守・改修では、ソースから分かる「今の動き」と、業務上の「正しい結果」を分けて確認します。業務ヒアリングで作るのは、単なる質問の回答集ではなく、対象・期待する結果・例外・確認者が分かる記録です。
このページのシートは、一つの画面、帳票、バッチなど、調査対象を絞って使います。全業務を一度に埋めようとせず、今回直す処理と、その前後につながる業務から聞いてください。
最初に聞く質問と、残す回答
| 質問 | 記録に残すもの |
|---|---|
| 誰が、いつ、何のために使いますか? | 担当部門、画面・帳票名、利用時点、作業の目的 |
| 何を入力し、何が出れば正しいですか? | 入力条件、期待値、根拠となる承認済みルール |
| 通常と違う処理はありますか? | 返品、値引き、取消、再発行、月末・締め後などの条件 |
| 後でどこへ渡されますか? | 帳票、在庫、売上、請求、CSV、EDIなどへの影響 |
| 失敗した時は誰が何を判断しますか? | 確認先、途中更新の調べ方、再実行・取消の承認者 |
| 変更後は誰が何を見て受け入れますか? | 確認ケース、期待結果、確認担当、実施時期 |
「再実行してよいですか」への回答が「いつもやっている」だけなら、再実行可能と確定しません。途中までの更新や外部送信の有無は技術担当と照合し、二重処理を防ぐ条件と承認手順を確認します。
コピーして使う業務ヒアリングシート
対象業務・画面・帳票:
今回の困りごと・変更したいこと:
利用部門・回答者の役割・確認日:
利用する時点・締め日・業務期限:
入力条件・前提となる状態:
期待する出力・金額・件数・状態:
正解の根拠(承認済み仕様等):
通常と異なる条件・例外操作:
前の処理/後の処理・外部連携:
失敗時に確認する情報・判断者:
変更してはいけない既存動作:
未確認事項・確認先・回答期限:
受入確認ケース・期待結果・確認担当:
回答は「確認済み事実」「利用者の認識」「未確認」に分けます。担当者間で意見が違う時は、多数決やAIの推測で仕様を決めず、業務責任者に判断を依頼します。顧客名や実データを載せた原本は許可された社内の場所で管理し、外部共有版には必要な範囲の匿名化・共有承認を行ってください。
請求金額が違う時の記入例
次は聞き取り方を説明する架空の例です。顧客の実績や実際の請求ルールではありません。「請求書が11,000円多い」という連絡を受けても、直ちにデータ修正へ進まず、比較している時点と範囲をそろえます。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 利用者の認識 | 期待額99,000円に対し、発行済み請求書は110,000円。差額11,000円は返品分ではないかとの説明。 |
| 対象・時点 | 対象請求書は月末締めで発行済み。返品が入力された時刻と、請求対象期間への帰属は未確認。 |
| 確認する根拠 | 返品を当月で差し引く条件、締め後訂正の扱い、請求書と返品履歴の対象範囲を確認する。 |
| 依頼したい対応 | まず差額の発生理由の調査。データ修正や請求書再発行は今回の調査依頼に含めない。 |
| 次の確認先 | 請求担当が承認済みの扱いを確認。技術担当が入力時刻と締め処理の対象を照合する。 |
11,000円という金額が一致しても、返品が原因とは確定していません。返品が締め後だったのか、条件により翌月扱いなのか、別の差額が重なっているのかを調べます。「今の在庫・売上」と「締め時点の請求」を同じ時点の値として比較しないことも大切です。
回答をテストで確認できる条件へ変える
「返品を正しく処理する」だけでは合否を判定できません。業務責任者が決めたルールを、入力の前提、操作、期待結果に分けます。下の例の具体的な期待金額・計上月は、自社で承認された仕様から記入してください。
| 確認ケース | 決めておく期待結果 |
|---|---|
| 締め前に返品を受け付けた | どの請求に、どの金額・明細で反映されるか |
| 締め後に返品を受け付けた | 当月訂正か翌月処理か、必要な承認と帳票の扱い |
| 確定済み帳票を再発行した | 表示・再発行識別と、追加の業務更新が発生しない条件 |
| 処理途中でエラーになった | 残る更新、外部送信の状態、担当者が判断できる証跡 |
テストは承認された検証環境とデータで実施します。具体的な確認表はRPG/CL修正後のテスト観点、変更内容の依頼票はAS400変更依頼テンプレートへつなげてください。
ヒアリング終了時に合意すること
- 今回の対象と対象外が分かれている。
- 正常時だけでなく、締め後・取消・再実行など必要な例外を確認した。
- 意見が分かれた点と未確認事項に、確認先と期限が付いている。
- 受入確認をする担当者と、期待結果の根拠が決まっている。
業務側が答えられないライブラリ名やプログラム名は、技術調査へ引き継ぎます。技術担当にはRPG/CL影響調査チェックリスト、資料と動作が食い違う場合には古い設計書の照合手順が役立ちます。
AIで整理する場合も、未確認を消さない
社内ルールで利用を認められたAIに、共有許可のある匿名化したメモを渡し、事実・認識・未確認・担当への質問に整理させる使い方はできます。ただし、匿名化だけで共有が許可されるわけではありません。AIが補った仕様や期待金額を事実へ格上げせず、回答者と技術担当が確認してください。
関連する現場の課題はAS400で実際によく相談されるトラブル10選、情報の渡し方はソースをAIに読ませる時の注意点で補足しています。